シンガポールの人材紹介会社 Y.N.Career Consultantsの榊(さかき)ダイレクターに伺いました。
●シンガポールで働くということについてお聞かせください。
私がシンガポールに来て、当地で人材紹介を始めて14年目になりました。
その間シンガポールも色々なことがありました。
1997年のタイから始まった通貨危機、持ち直してきたところに2002年のSARS(新型肺炎)、そして1998年のリーマンショックと、景気動向にあわせて、シンガポールのジョブマーケットも激しく上下してきました。
今年(2010年)はカジノのオープンなどで、一見バブルと思われるような好景気と言われる半面、外国人によるシンガポール人の雇用の機会の喪失が話題にでも出ます。
そのことは、とりもなおさず今後の日本人を含む外国人へのビザの発給にも深く影響を及ぼしてくるのでは、と目が離せません。
シンガポールはルールの変更もドラスティックです。
外国人が働くのに寛容であったこの国も、大きな転換点に差し掛かっています。
グローバルにビジネスを展開する企業が増え、国をまたいだ移動や就職が以前ほど稀少でなくなった現在でも、<この国では自分はあくまでも外国人である>ということを、常に意識しておかなければいけません。
シンガポールで働く期間は人それぞれです。
こちらに永住する方、他国へ移住する方、日本へ帰国して就職する方。
シンガポールで働く期間を特別なものとして他から切り離して考えるのではなく、引き続き5年後10年後を見据えて、将来の方向性や目的意識をしっかり持っていただきたいと思います。
●企業の求める人材とは?
日本人である必要性のある仕事だからこそ、シンガポールで日本人の需要があるわけですから、まずは日本人としての社会常識・マナーが身についていることは基本条件です。
これは外資系であったとしても、同じことだと思います。
また、どんな仕事でも進んで取り組んでいく柔軟性が求められています。
この点では、日本人だからゆえに理不尽な要求をされがちであるという現実も否定できません。
外資系では逆に、型にはまらず積極的に自分のアイデアを提案していくことのできる、aggressiveな方が好まれる傾向にあります。
当地ではどの企業も日本語が必要とされるような部門は少数精鋭であり、即戦力が求められています。
日本のように新卒者が一斉にトレーニングを受けるという慣習もありませんし、教育に時間やコストをかけたくない企業が多いという現状もあります。
素養と経験のある方を採用して、すぐに戦力として貢献していただかなければなりませんから、同業界や同業種、同職種での経験が重要視されます。
ただ、ある水準以上のスキルや経験は求められるものの、最終的に採用を決める際には、人柄や相性といった抽象的なものさしが左右することが多いのも事実です。
●これから働く人へのアドバイスをお願いいたします。
日本人の給与、3000ドルが平均だという声を聞きますが、それはそのレンジの給与のお仕事が多くあるということであり、決してそれがすべてではありません。
専門性の高いスキルを持っていれば、それに見合った給与を要求することも可能です。
求職者が専門を生かした仕事に就いて妥当な給与が得られる求人に出会えるかというタイミングは、転職活動をする上で大きな要素になります。
長期的なスパンで自身のキャリアパスを考え、お持ちのスキルを精査し磨いていきながら、じっくりと転職活動をされることをお勧めします。
エージェントとコミュニケーションをかかさず良好な関係を保つことで、今は市場に出ていないご本人のスキルに合うお仕事に対する求人が出てきたときに、素早くお知らせすることが出来ます。
もちろん、時間をかければ良いということではなく、思い切りが必要なときもあります。
間違った決断をしないためにも、転職に際して譲れない点、妥協できる点を普段から明確に描いておくことも大事ですね。
●御社のサービスについてお聞かせください。
弊社ではシンガポールでの人材紹介、特に日本人・日本語を話す現地スタッフの紹介に力を入れております。
求職者とは必ず面会してコンサルティングを行った上で、適職をご紹介するという姿勢は、会社設立から全く変わっておりません。
また、昨今取得が厳しくなりつつあると言われているビザ申請の代行にも定評があります。
短期やパートタイムの仕事、通訳者・翻訳者の手配といった言語サポートも行っております。
(インタビュー ’10年8月)